あとがき(ネタバレあり、読了後推奨。具体的なプロット変更点はこのページ下)

 読了ありがとうございます。
 このプロットを初めて見たとき、まず思ったことは、すごいなあと。でも大変なものをいただいてしまったのかも、とも思いました。
 プロットはとても細かく丁寧に書いてもらってありましたが、自分が挑戦したことがない本格的な時代知識を要求する内容でした。なんちゃって時代物、と書いてもらってあるものの、時代ごまかしでは難しい部分もあり、プロット主様から挑戦状を叩きつけられた気分になりました。
 これは、時代劇を読まない私には恐ろしく難しいプロット。それでも、自分を高める絶好の機会をもらったということでもあります。私が時代劇を書くのは今回限りかもしれませんが、できるだけのことをやってあがいてみようと思い、資料集めから始めました。
 年代設定は適当にごまかすつもりでしたが、資料を集めるうちに、きちんと時代を決めなければならないことに気が付きました。「花魁」という言葉ひとつでも、時代によって使い方が違うのです。上位の特別な遊女だけが花魁と呼ばれていたのかと思いきや、時代によってはそうでもない。大正期には遊女すべてが花魁と呼ばれていたと思える資料もあり、「禿」の年齢でも、8-10歳ぐらい、15歳ぐらいまで、新造になるまで、など資料によってさまざまで、どれが正しいのかわからず、次々資料を集めることになりました。参考資料一覧はこのページの下の方にあるリンクからどうぞ。
 当作品では小梅の年齢は15です。これを禿と呼んでいいのかどうか、正直自信はありませんが歴史学者でもない自分が悶々と考えていても答えは出ないので、禿という言葉を使うことに決めました。
 この作品を執筆するにあたり、もっとも困ったのは廓言葉と江戸言葉です。廓言葉は、廓ごとに異なっているのだということを今回の「勉強」で知りました。花魁が使う言葉の語尾、本来は「ありんす」「ありいす」「ざんす」などが混在することはないと思われるわけですが、言葉を統一して「ありんす」が続くとものすごく単調でつまらない。第一稿は「ありんす」で統一していたのですが、なんでもかんでも「ありんす」だと、自分でもいらだちすら感じる仕上がりに。そこで、まえがきに書いたように、複数の廓言葉を混在させることを考えました。ちなみに、プロが書いた市販の書籍はきちんと統一されています。私が見本にさせていただいたものはそうでした。廓言葉は歌舞伎や京ことばが元になっている、という説もどこかでみかけたので、そちらの流れも多少含むような形で会話文を作ってみました。廓言葉は徐々にすたれていくと資料本のどれかに書いてあったのですが、この時代はどの程度残っていたのかがどうしても調べきれませんでした。無理して廓言葉にせず、すべて現代言葉で会話もよかったのかもしれません。
 江戸言葉は市販の書籍でも現代っぽい言葉が混じっている作品があり、武士と商人、一般町民女性など、それぞれ言葉づかいも違うようで、取ってつけた知識ではとうてい使いこなすことは出来なかったので、こちらも適当に自分流に作りました。すみません。

 【プロット変更について】原案プロットはこちら(全然違うじゃねえかって笑ってやってくだせえ。原案者様、ごめんなさい。土下座中)。内容につきましては、プロット主様自身が事件の顛末の変更を望んでおられるようでしたので、思い切って設定を大きく変更しました。改変プロット一話ごとの流れはこちら。
○パトロン的存在の男を追加。この男を使って話を動かしたため、大きくあちこち変更。元許嫁と会う場所と彼の死に場所、および、彼の死体の始末など。
○花魁が廓へ帰る理由を変更。妹女郎のお披露目のために廓に戻る、ということに。自分の寿命がわかるほど弱って療養している人間が簡単に床上げして廓へ戻る、という原案の設定がどうしても受け入れられなかったので。
○妹の性格と現在の彼女の環境。普通の性格で饅頭屋の若旦那の奥方に設定。原案にない彼女の夫も一部登場。妹が姉の代わりに接客する設定をなしに。
○花魁が物売りに化けて廓へ戻る場面の一部設定変更。汚い物売りではなく饅頭屋に変更。
○花魁の病状をより深刻に。結末を踏まえて変更。
○花魁の黒子の位置  着物を脱がせる記述を省くため首に変更。
○花魁の地位 売れっ妓、中見世の元トップ(太夫はこの時代は消滅)
○火事、および、小梅と佐之吉の恋をちょろっとだけ追加。ラストが締まらなかったので史実に基づいた日付で火事を入れ、微恋愛も加えることで、ほっとする場面を作り、淡々としがちな物語に少しだけ花を添えてみました。が……掲示板を拝見する限り、この企画参加者さんたちは恋愛を入れることに抵抗がある方が多いようで(汗)。批判覚悟です。
○原案は妹が花魁を殺すことになっていますが当作品では……はい、読んでいただいた通りです。原案のままですと、実の姉を殺す理由が弱いと思いました。

 たくさんの事柄を変更してしてしまったのですが、ミステリ風で、髪切り、顔を潰す、妹との入れ替わり、血文字、と原作者様が望んだ要素はすべて捨てずに入れました。三助の実家の陰謀はあまり出せませんでしたがほぼ原案通りです。原案では花魁が自分で吉原へ行ったという点だけ、元許嫁に売られたに変更しました。その他にも手文庫の残金量など、微妙に原案と違っている細かい部分もあり。
 かなり時間をかけ流れを考えながら作りましたが、これが私の限界です。もっと枚数があれば、過去も入れられたのではないかと思っています。歴史背景や三助と菊千代の実家問題までがっつり描くと300枚でも足らないです。
 読みにくかった点も多々あると思います。それでも読了してくださった読者の皆様、そして、こんなすばらしい企画を考案してくださった恵陽様、心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。引き続き、企画サイトでお楽しみください。

       2012/12/3  菜宮 雪
 

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