第二回恋愛ファンタジー小説コンテストの作品より

私も参加させていただいた、第二回恋愛ファンタジー小説コンテスト(2009/7/18閉幕)   戻る   ホーム
前回に比べると、字数が増えた分、読み応えのある秀作が多かったです。今回は全部で58作品も。
ブログの方でも少しふれましたが、今回は、強い女を描いた作品が結構ありました。女性が男性よりも活躍したり、男言葉で話すなど、時代を反映しているような。投稿作品数が多いだけに、設定、発想、文体かぶりのものも。
ここでは、私が気に入った作品を選びだして紹介。選んだ基準は、退屈させられず、内容がわかりやすく、読みやすいこと。あくまでも自分の好みです。少々難ありかと思える作品も入っていますが、私が書き手として見習いたい部分を持つ作品ばかりです。私の好みのものばかり集めたので、当サイト内ですでに紹介している作者さんの作品もちらほら。この紹介記事は、作者名が明かされる前から読んだ順に徐々に作っており、知っている作者さんの作品だったから取り上げたわけではありません。無意識に知り合いの作品を選んでいた自分にびっくり。作者名を知り、あわてて記事に加筆追記などをほどこしました。そういうわけで、ここに載せている作品傾向はかなり偏っております。
※私がおもしろいと感じた作品でも、既存の少年漫画や小説などを連想させるものは、投票していてもここでは紹介しません。一応、オリジナル小説のコンテストなので。
掲載順は、投稿順。

「蛍」    ナノハさん
現代恋愛もの。付き合い始めだと思われる、若い男女の初々しさが魅力。本当の恋人同士には、まだなっていないだろうと想像でき、今後の二人の予想までさせてくれるピュアな作品でした。地味ではありますが、二人の描き方は絶妙です。蛍の舞う夜のひとコマを切り取ったような、美しく、素朴な作品。オチはなくても、作品全体に流れる落ち着き感が心地いいです。

「猫かぶり公子」   中井かづきさん
二位入賞作品。西洋風ファンタジー。侍女が読み手に語りかけている、という手法で描かれたこの作品、ひらがなが多め(たまに難しい字も入ってます)にしてあり、とても読みやすいです。投稿してすぐに簡易投票で高得点を得ていることは納得がいきます。話の筋もわかりやすく、ほほえましいラスト。読み手を選ばない作品だと思います。早い時期に出したことも追い風になったようです。作者、中井さんのサイトに、公子がお嬢様に恋したエピソードが追加されていました。この作品のファンの方、必見です。そちらでは改題されています。

「碧の独善」    冴島芯さん
こちらも西洋風ファンタジー。かなわぬ恋をしている女性の、哀しく深い愛を描いた作品です。いきなり結婚式から始まって引き込まれるように読まされました。設定は長編向き。この字数しかない短編で語る必要はないだろうと思える設定がかなり入っていますが、王道っぽくても、そうはならないストーリーがとても印象深く忘れられない作品でした。続きを連想すると胸が苦しくなりそうです。切ない! 

「太陽と月の終わらない恋の歌」    Julesさん
五位入賞作品。こちらも上と同様の西洋風ファンタジー。女性が、男性を遠くから眺めている、という冒頭の設定は上の、「碧の独善」と同じですが、内容は全く違います。この作品は、中盤の動きのある展開がいい味を出しています。文章もつまるところなく読めて、しかもわかりやすい。まだ若すぎる彼女の成長をじっと待つ彼の、裏の顔も素敵です。この作品の続編が出されるようです。Julesさんの他の作品は、当サイト内「お気に入りネット小説」で一部紹介しています。追記:2009/9 長編として連載が始まりました。

「大魔女は策士でもある」   海/藤/雄/馬さん(追記:2009/9/7現在、海/藤さんは行方不明です。この方を探してたくさんの人がここを覗きにいらっしゃるので、お名前に検索逃れのタグ/をいれてあります)
三位入賞作品。性別偽り……男だと思ったら、実は女、といった話は、よくある設定ですが、この作品はひねりが効いており、なるほど、と感心させられた内容でした。この作品は、ネタばれしてしまうと面白くないので、これ以上書きません。この話における大魔女の歳は不明となっています。それがまたいいです。

「月の戦士」   BUTAPENNさん
異世界風ファンタジー。敵対する男女。あわい恋のようなほんわか感はなく、どろどろした深い感情を呼び起されるような作品。村を滅ぼされ、捕らえられた男性は、奴隷となり女性に従わされる屈辱の日々を送りますが、期が熟するのを待ち続け……という重い内容ですが、読みやすく、この後二人は戦うのではないかと想像できるだけに、先が読みたい作品です。こちらの作者さんの他作品は、前回優勝作品も含めて、当サイト内「お気に入りネット小説」のところで紹介中。

「プラスチック・ハート」   柚木あずささん
女性型アンドロイドと暮らす男性の話。人間の女性そっくりな彼女とのやりとりが面白いです。男として、ついつい女性を意識してしまう彼と、アンドロイドならではの彼女のぼけぶりが笑えます。欲を言うなら、もっと深い関係になるところまで描いてほしかったような。(あやしく妄想中)いえ、なんでもありません。この作者さんの作品も当サイト内で一部紹介中。

「殻を隔てて」   三里アキラさん
この作品の発想には拍手を送りたいです。恋人が突然卵になってしまった、という奇想天外な設定がとても個性的。そしてショッキングな結末。おもしろさの中に、さびしさもあって、1200文字にも満たない字数ながら、心に残りました。ただ、余分を削りすぎたのか、心理や背景の描写が少ないので、読み手は話をきかされているだけの感覚で、いまひとつ入りきれないところがもったいないと思いました。4000字までの規定なので、もう少しいろいろ入るのに、と思ったり。それでも、これは非常に個性的で面白い作品です。好き嫌いはかなり個人差があるようですが……

全部の作品を掲載できず、すみません。ここで紹介していなくても、好みじゃなくて、ちょっとなぁと思うけど、これはがんばって書いてあると思った作品には投票しています。すばらしい作品がいっぱいで、読者としても、参加者としても楽しめました。前回参加した方々もそれぞれにレベルアップしておられて、自分も置いて行かれないようにしなければ、と改めて感じました。いや、すでに置いて行かれているのだ……ため息がつい……精進せねばっ!
たったひとりですべてをやっておられた主催者、赤西紅さま(2010年夏、音吹美歌さまに改名なさいました!)に感謝します。
赤西(音吹)さま、お疲れさまでした。ありがとうございました。お礼に宣伝。

赤西(音吹)さまの小説サイト「短編小説物語」リンク切れ  ブログ「日常非日常」残念ながらこちらもリンク切れです
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