おふざけ二次創作集

2.その後のお地蔵さまたち(かさじぞう)


 お地蔵さまたちに笠をプレゼントし、お返しに、裕福になった老夫婦のうわさは、瞬く間に村全体に広がりました。お地蔵さまの見返りを期待した人々が殺到し、お地蔵さまは、いつも新しい笠、手作りの着物などを着せてもらい、とても大切にされるようになりました。しかし、もう、お地蔵さまたちは、恩返しに行くようなことはしませんでした。お供え物も、かかさず置かれるようになりましたが、お地蔵さまたちが動くことはありませんでした。
 笠をプレゼントしたあの老夫婦が、お地蔵さまからご利益を受けたことは事実で、人々はそれを疑うことはしませんでしたので、お地蔵さまの為に財をなげうって、りっぱなお堂まで建立する者もあらわれました。
 お地蔵さまたちが、豪華なお堂に収められた日。新品のお堂の中、うず高くつまれたお供え物の間から、ひそひそと、いつくもの声がします。人は誰もいません。
「うっしっし! 思った通りになった。おかげでこんなに立派な家に住めるようになった」
「まったくだ。安くついた。笠をくれた老夫婦にちっとばかり物をやったら、こんないい家になって返ってきた。いちいち恩返ししない方がいいことがわかった。物を返すときは、ちゃんと後を考えないとな……」
「最初からそういうつもりだったのかい? 私は笠をもらってうれしかったから、あの老夫婦を助けたつもりだった。みんな、そうではなかったのか」
「どっちにしろ、もうここから出られない。こんなに立派な扉で閉じ込められていては、出歩けない。私たちはどこにも行けないのだよ」
 お地蔵さまたちは、入口の方へ目をやりました。扉の内側には、盗難防止のため、鉄格子がはめ込まれ、頑丈なかぎが付けられていたのでした。
 お地蔵さまたちは、今日も大切にされて、立派なお堂の中に、動くことなく立っています。
 
(おしまい)……ですが、さらにこの続きはこちらへ

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