おふざけ二次創作集2のおまけ

  2.自由の天地へ(かさじぞうのその後のさらにその後)
 2を読んでいない方は先にこちらを読んでね!



 立派なお堂の中ができ、出歩くことができなくなってしまったお地蔵さまたち。お堂の中で、静かに毎日を送っていました。
 ある日のことです。新月で真っ暗な夜中に、ガチャガチャ、とお堂の鍵が揺れる音がします。風は吹いておらず、ねずみの音にしては大きすぎました。泥棒かもしれません。やがて、鍵が壊され、ひとりの男が御堂の中に忍び込みました。男は、手に持っているたいまつをかざしながら、お地蔵さまたちの真ん中あたりへ来ると、そこへ座り込んで、頭を深く下げました。
「どうか、もう一度お願いします。この笠、全部差し上げますから。うちへお越しください。一生懸命作っても、笠が全く売れなくて、本当に食事にも困っているのです」
 たいまつの揺れる明かりに照らされたその横顔は、よくみなくても、老人だとわかります。それは、ずっと前にお地蔵さまたちに、売れ残った笠をかぶせてくれたあのおじいさんでした。あの時よりも、年月が経っているため、さらにふけています。おじいさんは、薄くなった頭を下げながら、一体、一体まわりました。そして、それぞれのお地蔵さまたちに、持ってきた笠をかぶせると、お堂の扉を壊したまま出て行きました。
 おじいさんが出て行くと、お地蔵さまたちは相談を始めました。
「どうする? 自由が手に入った。なにかプレゼントしてやってもいいんじゃないか?」
「うむ。あれは雪の日に笠をくれたやつだろう。ずいぶん苦労しているようだ。どうやら、私たちが持ち込んだ米などは、すっかり使いきってしまったらしいな。あいかわらず、貧乏そうで、しおれきっているじゃないか。何やらあはれだった。よし、それなら、自由をくれたお礼に――」

 翌日の晩のことです。深夜に扉をたたく音に、笠屋の老夫婦は目を覚ましました。
「おじいさん、こんな時間にお客さんなんて、おかしいですよ。泥棒に決まっています。扉を開けない方がいいでしょう」
「いや、違う。きっとお地蔵さまたちが、また来てくださったんだ。実は、夕べ、お堂までお願いに行ったのだ」
 おばあさんは、そのことを知らなかったのですが、以前、いろいろもらったありがたさを思い出し、笑顔になりました。
「では、すぐにお迎えしましょう」
 おばあさんは、はいはい、と返事をして扉を開けました。
「あひゃ〜っ!」
 そこには――


 素っ裸の若い女が立っていました。長く真っ直ぐな黒髪が、何も身にまとっていない素肌の、はちきれんばかりの大きな胸元を隠しているだけです。女は、腰を抜かしてしまったおばあさんを、冷たく見降ろしました。
「あれ? ばばあがいたんだぁ。そんなの聞いてないよぉ」
 おばあさんの悲鳴に、おじいさんも戸口へ出て来て、ぴちぴちの体をした若い女を凝視しました。おじいさんが口をきくまでに、少し時間がかかりました。
「あ、あの……どちらさまでしょうか……」
「どちらさまって? あんたが頼んだんじゃないか。なんだよ。ヤラないなら、あたし、もう帰るから」
 裸の女は、そのまますたすたと帰って行きました。後には、腰を抜かし、座り込んだまま動けないおばあさんと、鼻血をたらし、呼吸を乱して、下半身を膨張させているおじいさんが残されました。

 そして、お堂の中。ひそひそと声がしています。
「あの老人は元気になったようだ。よかった、よかった」
「どうやら、私たちが力を合わせて化けた女が気に入ったらしい。あの老人に、つれあいがいたとは思わず、ちょっと失敗だったが、まあいいか……」
  
(おしまい)
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